レストア物語ヘッダー
「フェンダーから」


間借りできる事になった試作作業場は、今まで作業を進めてきた港工場から少し離れた
名古屋市港区の大江工場内にある。コニーちゃんは、またまたアトラスの積載車に載せられお引越し。
作業場はリフトや溶接機だけでなく、プレスやボール盤等の設備や工具が完璧に揃った試作工場。
図面だけでゼロから車を起こす事が出来るんだから、道具があるのは当り前か。

作業の基本方針は、

(1) 錆が出ている部分はグラインダーで削る
(2) 穴が開いている部分は鉄板のパッチを充てて溶接
(3) 小さな穴ぐらいならパテで埋める
(4) 欠落や欠損した大きな部分は新たな鉄板で造り直して溶接
(5) 最後はパテで整形

作業はフロントのフェンダーから始める事にしたのだが、グラインダーで錆を削っていくと、
塗装で隠れていた部分の下から錆が顔を出し始めた。
削る範囲は広がっていくばかり。
おまけに深い錆を「追跡」してたら、やっぱり貫通してしまった。
とにかく表側が削りおわったんだけど裏側が・・・

こりゃあ駄目だ。

こうなったら、ばっさり切り落として造り直すしかない。

試作作業場には車両のボディー部分に使う高張力鋼板の端材が捨てる程(!)ある。
その一部を使って板金。リサイクル、リサイクル。
専用の板金用ハンマーを使い、残った原形部分や反対側を見ながら形状を倣って叩くが、
いくらやっても形が出ない。何度も叩いたら鉄板が延び切ってデコデコに。
「しょうがねえなあ。」
見かねたプロが、ちょいちょいっと叩いてくれた結果は、これ。


やっぱ、上手いねえ。


板金にて造り直した部分をフェンダーに溶接。ここでもプロの技が。
0.7〜1mmぐらいの鉄板を素人が溶接しようとすると、溶けて穴が開いてしまう。
穴を塞ぐはずなのに逆に開けてしまうなんて、笑うに笑えない。
さすがプロが扱うと、こんなに奇麗に。




その他の部分も板金で継ぎ足しながら再生。



あとは溶盛り部分をグラインダーで均し、パテを盛ったら終了だね。
裏側が袋形状になっていないから順調に進んだけど、このフェンダー1枚を仕上げるのに
プロでも2日間は掛かってしまうとか。

一般の人がプロに頼むと、どうなるのかな?
時間当たりの工賃を5000円として1日8時間で4万円、だからフェンダー1枚に
8万円かいな!じゃあボディー全体では・・・凄い事になりそう!

超希少車だろうが大衆車だろうが、同じ程度に仕上げると修正時間はそんなに変わらないので
部品代が高価ではない大衆車の場合、レストア費用って作業時間による工賃の塊になってしまうなあ。
ボディーだけの修復費用は大衆車だからって安くはならない。
だから街のレストア屋さんに頼むと、希少車でもないのに数百万円なんて凄い金額になる訳か、納得。



という事で、次回は「ドア」。

No.20
「ふれあい遊ing
No.22
「フロント部」