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「またもや流用伝説」



フォークリフトから流用したホイールシリンダーとトライアルで造ったブレーキパイプ、それを
ピッチ1.0のフレアナットで締め込んでみたところパイプがガタ付いてしまう不具合が発生してしまった。
不具合理由を調べるため、ナットをピッチ1.25に替えてからコニーのホイールシリンダーに
組付けてみると、ガタ付きも無くしっかり締め込められた。
ということはパイプには問題が無くて、フォークリフトから流用したホイールシリンダーが怪しい。
そこで新旧2つのホイールシリンダーを並べて、ネジ穴の奥のフレアパイプが当たる部分を見比べてみると、
形状が全く違う事を発見。
コニーの方には何か小さな部品が埋め込まれているが
今回流用したホイールシリンダーにはそれがないのだ。
慌ててASSY図面を確認すると当該部分には、やはり子部品が挿入されている絵となっていた。


どうやら流用伝説には新しい情報を付け足していかねばならないようだ。

挿入されていた部品はJASOの基準書で調べると「打ち込みシート」というものらしいが
部品商のカタログを見てもそんな部品は載っていない。
こんな部品の存在なんて全く知らなかった。
こいつは困ってしまったが、流用するホイールシリンダーをよく観察すると
打ち込みシートが圧入出来そうな穴が加工されている。
穴のサイズを測り部品商にこの部品が入手できないかダメもとで問い合わせてみると、待つこと数日
使えそうな大きさのものをサンプルとして郵送してくれる事となった。

後日、この打ち込みシートについて、クラブ顧問の知恵袋氏が以下の話をしてくれた。
「昔のクルマに銅の打ち込みシートが圧入されている理由はね、穴というのはドリルで開けるから、
そのままではパイプのフレアに対応できないので仲介部品が必要だったのさ。
片面はドリルビットの先端テーパー形状、もう片面はパイプのフレア形状である部品、
つまりそれが打ち込みシートだったのさ。
最近のクルマはそんなのを圧入するなんて悠長なことやってられないので、先端がパイプのフレア形状に
対応する専用切削工具で、一体の穴形状にして加工しちゃっているけどね。」
ふんふん、なるほど。そして知恵袋氏は、こんな話も。
「締め込んでもガタがあるというのはフレアナットの有効ネジ長さが足りない可能性もあるから、
気を付けなよ。なぜか昔はフレアナットの長さに複数の規格があったからね。」
そうなんだ、早速ネジ深さの比較をしてみなくては。

数日後に打ち込みシートのサンプルが届き、我々のホイールシリンダーに合うのを選んで正式発注、
そして受取った部品は、これ。



早速ホイールシリンダーに圧入し、フレアナットで締付けたところ今度はガタも無く
しっかりと締める事ができた。心配していたフレアナットの長さは、偶然にも用意していた物と
ピッタリだった、運が向いてきたのかな。

打込みシートの問題が解決した頃には
銅製のブレーキパイプも届いて準備万端、
さあパイプ造りを始めるかい。

フロントホイールシリンダーチューブは、なぜか”豚の尻尾”の様にくるりと輪を描いている。
たぶんこの輪の部分で振動を吸収する構造なのか。
専用工具でフレア部分を造ってナットを入れ、ベンダーでパイプを挟んで曲げてやるんだけど、
ベンダーではU字形状までしか曲げられない。が、そこは銅パイプ、軟らかいから手でそのまま
ぐいぐい曲げてやったら簡単に豚の尻尾形状となった。
反対側のナットを入れたら先端をフレア形状にして完成、ホイールシリンダーへの組付けは完璧。

形状が豚の尻尾みたいでしょ。

これを組付ければでフロントのホイール側は終了。あとは同じ様にリヤ側のパイプを造ってやれば良い。
早速残りの銅パイプを使って製作する事にした。フロントと違って豚の尻尾じゃないけど、
左側はやたら長い。


フロントとリヤのホイールシリンダーを組付けてブレーキパイプは終了した。あとはマスターシリンダーの
オーバーホール待ちだね。業者からは約1週間ぐらいで完了するとの連絡があったが、待ち遠しいねぇ。

ところがところが、そうは簡単に終ってくれないのが嘘のようなホントの話。組付けを担当したクラブ員が
締付けたばかりのフロントブレーキパイプの奥を見つめながら、
「これもこのままじゃ駄目ですねぇ、交換しなきゃ。」と呟いたのであった。
またですかい、今度はなんだい?



次回につづく。

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