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「ブレーキ復元物語」



「悔しいなぁ・・・」TV画面の前でそう呻いたのは、
AF7コニーの復元に初期から携わってきたクラブ員であった。
視線の先には2003年5月に愛知県岡崎市で開催された
“三河で旧い車イベント”を取材した“CGTV”が放映されている。
番組ではイベントの概要を紹介した後に、当日参加していた珍しい車を個別に取上げて、
運転するオーナーの横で同乗した記者がインタビューするという内容。
同乗取材以外の車は殆ど取上げられなかったのだが、我々が持ち込んだコニーちゃんだけは
展示の状態なのに特別に(?)紹介され、コメントを貰っていたのである。

準備不足で未整備のままイベントへ持ち込んだコニーちゃんはもちろん不動車、
もし動かすことが出来たら我々にもインタビューが・・・、
という無念さがこみ上げてきたのである。
そういえば、「走れますか?」と記者から聞かれたもんなあ。

カメラマンと記者に囲まれるクラブ員

コニーちゃんが動かないのは、1年に1回しか外へ出してもらえないことにへそを曲げたから。
では無く、ブレーキが利かないので社外では走らせられない→社内でも保管している建屋廻りしか走れない→
保管している2階の部室から降ろすのは大変→エンジンを掛ける機会が無い→整備をしない
という流れで、放置(名古屋弁では“ほかっとく”と言います)してきてしまったのだ、それも3年も!
ブレーキが利かない理由は、ブレーキフルードを抜いたままなのと
ホイールシリンダーをバラして組付けてないから。
だってすぐに全てのシリンダーからフルード漏れを起すので修理しかけたんだけど、
そのまま3年も経ってしまったのだ。
配管 マスターシリンダー
FRブレーキ RRブレーキ


そもそも車体復元時にブレーキ類を完全にオーバーホールしなかったのが原因、
あの時はどうしても交換部品が入手できず、駄目と解っていたが掃除しただけで
組付けちゃったんだよね。その後何度も分解を繰り返し、シリンダーを奇麗に磨き上げ
ラバーグリスをたっぷり塗って組付けてみたのだが、駄目部品ではやっぱりダメで
すぐにフルード漏れを起こしてしまいお手上げ状態。
おまけに完全に抜いたはずだった塗装面への攻撃性が高いブレーキフルードが
室内に漏れ出して、哀れコニーちゃんはこんな悲惨な状態に。

取り敢えず黒く塗ったんだけど・・・

再度部品探しから始めるか、まずはオーナーズクラブの人に聞いてみよう。
コニーの部品ならこの人!とその筋では有名(?)なオーナーさんに連絡を取ってみた。
マスターシリンダーとホイールシリンダー、持ってないですか?
「うーん、それが部品は無いんですよぉ。」。えっえー、いきなりダメ出しか。
「数年前に欲しいという人にマスターシリンダーの新品を譲ったんですけど、シリンダー内が錆びてて
使いものにならなかったみたい。因みに中古品も同じ所が駄目なんですよ。」

でも彼のコニーはナンバーが付いていて、普段も乗っているはず。じゃあ、どうしてるの?
「ホイールシリンダーもマスターシリンダーも、他車からの流用品ですよ。
だから配管もタンデムで造り直してるんです。」
タンデム?造り直し?
昔の車はブレーキが1系統で、
マスターシリンダーから4つのホイールシリンダーに配管が分岐されるだけだったけど、
その配索だとどこかが破損したら全ての油圧を失い
4輪全てブレーキが利かなくなって危険であるということから、
昭和40年代後半頃から2系統つまりタンデム式にしないといけなくなった。
これはマスターシリンダー内を2つの部屋に分けて、FF車の場合は
片側を前の左側と後の右側へ、もう片側は前の右側と後の左側へと完全に分割、
FR車の場合は片側は前の左右、
もう片側は後の左右へと完全に分割されているので、片方が破損して油圧が0になっても、
もう一方が残っているために止まれなくなるというのを避けられるというシステム。

FF車:俗にX(エックス)配管と呼ばれてます FR車:FFとは配管が違うが・・・

彼のコニーちゃんも当然1系統だから、シングルのマスターシリンダーで形状が合いそうなのを探そうとしたんだけど
なかなか見つけ出せなくて、それなら最近の車の2系統部品使ってしまいタンデム式にしておいてブレーキパイプを
全て作り直した方が早いということになったそうな。
タンデム式の方が安全だし、なんせレストアは時間が掛かればそれだけ価格に跳ね返ってくるから、
彼がお願いしたクルマ屋さんも確実な手段を選んだのだろう。
流用した部品が何だったか調べてもらうことを約束し、電話を切ったのであった。

じゃあ、我々のコニーちゃんはどうしよう。ブレーキ配管を全て引き直すなんて自分達で出来るわけないし、
クルマ屋さんにお願いする費用も無し。
悔しさはどこかへ消し飛び、壁にぶち当たって挫折しそうなクラブ員であった。



次回に続く

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