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+ No17 + 「色ぬり」


塗装を始める前に、ボディーと同色に塗る小部品も仕上げておこう。
ドアに取付けられているモールなんだけど、当初は錆穴を溶接で塞いでの再生を試みたのだが
グズグズの鉄板にはとても太刀打ち出来ずに断念、
本来なら板金で新たに作り直したいところだが、悲しいかな短時間で叩き出せる技術が無い。
そこで自作ヨットの製作で扱い慣れた木で造ってしまえ!と発起人氏、
さすがにあっと言う間に左右とも完成してしまったのであった。

モール1 モール2

そしてヘッドライトのフィニッシャーもオリジナルは樹脂成形品であるのだが、
邪道だけど超短時間でできるカットファイル(紙です)を切って貼り合わせておしまい。

ライト
イベントが終わったら鉄板で造り直すか

これでボディーと同時に塗装する部品は全て揃ったので、いよいよ色塗りへ進もうか。

塗料の調達は、ちょうど造形課へ打合せで来社していた塗料メーカさんと交渉、
無理を言って赤と白の4キロ缶を小売りしてもらうことになった。
但し「赤」といっても消防車みたいな赤じゃあ困る、ちゃんと希望色に調合してもらわねばと
色見本を用意、新車塗装時から色褪せていないと思われる運転席足元奥に隠れていた
ブラケットを渡して色合わせをお願いした。
白色については、「昔の白ね」とだけお願い。
カンパや社内での賞金を注ぎ込んで購入した塗料は1週間ほどで手元に届いた。さあ塗りますか!

前回のAF7は工場にお願いして塗って貰ったが今回は自分達で挑戦、
設備はデザインスタジオに隣接する塗装ブースを造形課長にお願いして借用。
パネルが分割できてルーフが完全に別物でバラせたから赤白ツートンカラーの塗り別けにはマスキング不要、
ガラス部分のみをマスキングして塗料の吹付けを開始した。
慣れぬ手付きでスプレーガンを振り回してみたが、ガンの振り方と噴射量のベストな調整方法が解ってないから
どうしても塗料が垂れる(ダレとも言う)、但し確か“ダレる寸前まで吹くのが高等技術”と聞いた覚えがあるから
ダレを心配してたら艶は出せないもんだと部品を立てたり横に寝かしてみながら四苦八苦あれこれ試したけど、
ダレているのにどうしても艶は出ない、何度やっても出ない。

後で知ったのだがダレ寸前まで吹く高等技術は現在の2液性ウレタン塗料の場合だったみたい、
今どきのクルマには使ってない我々のような1液性ラッカーは吹き方だけでは艶を出せないらしい。
そんなことは知らないからダレを繰り返して時間を浪費した挙句に方針変更、艶無しで塗り終えて
乾くまで待ってから微粒子コンパウンドでひたすら磨いてあげた。

艶

ダレと格闘しているうちに暦は1995年から1996年へと変わり作業可能日も残りあと僅か、
内装も見られても恥ずかしくない程度に急いで仕上げなければ。
ボロだったシートの表皮は造形から余ったモケット生地をもらって手縫いし、
天井のトリムは設計部門にあった端材のパーチクル発泡シートを現物合せで切り抜いて
ゴム系接着剤で貼り付け、ドアトリムもレザーのシート材を切り抜いて貼っておしまいにした。

内装

キャブの点検孔のカバーもセール糸と針で夜なべして縫い上げた発起人氏のハンドメイド品、
こいつの素材はフェアレデイZ用の立派なスペアタイアカバーをリサイクルしたものだ。

ブーツ1 ブーツ2

はてフェアレデイZには何で立派なスペアタイアカバーが装備されていたのかって?
それは国内向けZでテンパータイアやインフレータブルタイアが認可されておらず
スペアの置き場所が無くて室内にデーンと乗っけていた時代があり、
それにはファスナーの付いた立派な化粧カバーで覆われていたのさ。


ま、Zとは違って内装なんて有って無きに等しいクルマだからこんなもんだわさと呟きながらの突貫工事、
期限までになんとか展示できる状態にまで仕立て上げたのであった。



さて次回は、作業と併行して進めていたイベント参加の準備へつづく。

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