ヴィンテージ・セレクション

気まぐれに、愛知機械工業の昔を紹介するページです

006 ・・・ 農業用発動機、その2


第6回目は、農業用のエンジンの続きです。



今回は農機具(主に耕耘機)組込み用エンジンのお話です。
昭和30年代になると、汎用的に使える、重くて低速回転の農発は衰退し、耕耘機などの組込み動力源として、軽量化と高速化が図られると共に、高度な技術力と生産力が必要になり、メーカー淘汰が進んでいきます。
愛知機械も自動車製造に専念すべく、1966年に農業事業から完全撤退しました。
前回に引続き、資料的価値を考慮し当時そのままの文面で掲載します。

・・・ 手抜きじゃないですよ(笑)


今年が1965年(昭和40年)のつもりで読んで下さい。

文章中に登場するメーカー名は当事のもので、製品は全て生産終了しています。





高速農発その2 (AE30、40空冷ガソリンエンジン)

昭和30年を過ぎると、空冷ガソリンエンジン時代が始まりました。即ち、外国から輸入したハンド・トラクター(テイラー)の影響を受けて動力耕耘機用として安価な側弁式のガソリン・エンジンに関心が持たれ始めたのであります。


お手本はアメリカのブリッグスとクリントンで、各社それぞれをモデルにしてつくり始めました。
当社はブリッグスをモデルにして製作し、昭和32年ヂャイアント・パワーという名前で売り出しましたが、“ごこく”という名前以外で発売した最初の機種であります。

これがAE30(247cc)で数種のタイプがあります。
写真AE30および表16を参照)

AE30
表16

しかしこのエンジンは、他メーカーでも苦しんだ従来の農機具との関連に問題があり(主に減速関係)、これを解決したのが昭和35年に発売したAE40型ヂャイアントパワーであります。

これは東洋社の日の本耕耘機用として活躍し、昭和38年に機種変更のため生産が打ち切られるまでに13,500台を生産し、当社農発で一機種総生産台数では新記録をつくりました。

AE40は東洋社流にいえばTE40ですが、これに改良を加えたTE40Aは昭和39年8月より生産を再開し今日に至っております。(写真TE40Aおよび表16を参照)

空冷ガソリン・エンジンではAE30より小さいAE31(192cc)を昭和33年に発売し、ヂャイアント・ロンガーと称しましたが、これにも数種類のタイプがあります。(写真AE31

これは、昭和35年に改良されてAE41(東洋社での呼称TE32)となりました。しかし、中規模生産に終り、他に船外機用のAE41Aともなりました。(表16参照)

また、更にこれより一回り小さいAE33(140cc)が昭和37年、佐藤造機向けに生産されましたが、
現在船外機用としてAE33Sに転用されています。(表16参照)

TE40A
AE31

高速農発その3 (TE80型空冷灯油、他)

昭和37年11月から生産されはじめたTE80型は前述の東洋社で製作する新耕耘機用に新しく開発されたもので(写真TE80)、6馬力、377ccの空冷灯油エンジンであります。
即ち、ガソリンの代りに価格的に半分の安価な灯油を用いた農家には経済的なエンジンを狙ったものであります。

これもTE40と同様、当社の農発でヒットしたものの一つで、空冷灯油エンジンのトップレベルのものとして現在も生産が続けられており、スタータ付きのTE80S(四輪トラクター用)も合計しますと、現在総生産台数は15,000台にも達しております。(写真TES80および表17を参照)

この他、昭和35年には、井関農機向けに製作したものに同じ高速の灯油エンジンではありますが、水冷のAE43(262cc、井関呼称はER7)、AE45(192cc、井関呼称はER5)があり、昭和37年には
中速の同じ井関向け水冷灯油エンジンNB8A(450cc)などが生産されはじめましたが、これも中規模に終り、昭和38年井関からの受注終了と共に生産が中止されました。(表18参照)

TE80
TES80搭載 MB四輪耕耘機

表17、表18



当社農発のトピックス

水冷農発のホッパーの中の水はせいぜい30分位で無くなってしまいます。この水をなるべく持たせる様にというので当社でも色々研究しましたが、その一つがホッパーの上にコンデンサー(凝縮器)を付けたもので、蒸発した水をここで冷やして水として再度の使用を図ったものであります。

写真写真AE7は、1000cc農発にこれを付けたものですが、あまり効果ありませんでした。
次に蒸発した水蒸気を回転するフライホイールの中で凝縮させようとしたのがAE39の農発です。(写真AE39

これは回転するフライホイールの中に水蒸気を導き、凝結してフライホイールの内側外周に遠心力でへばりついた水を導管で汲み出してホッパーに戻す式でした。

これは案外好結果を得て、一般ユーザーの手にも渡りましたが、大勢のおもむく所はラジエター付の水冷農発となり、これ等は試作程度に終りました。

その一つのAE50は212ccの高速水冷ガソリンエンジンでラジエター付のものであります。
これはベロセッタというオートバイをお手本にしたものですが生産台数は少数に留まりました。(写真AE50および表19を参照)

話があとさきになりましたが、前章でお話しした水冷高速灯油エンジンAE43、AE45はラジエター付でホッパーと兼用で水で冷却しシロッコファンで送風しており、水冷中速灯油エンジンNB8Aはラジエターだけで冷却してプロペラ・ファン付のものでした。

現在水冷式農発は給水の手数を省くためと傾斜地でも使用可能の様に殆どがラジエター付となりつつあります。

AE7
AE39
AE50
表19

農発用ミッション

当社で製作している農発とセットで使用されている変速機(ミッション)について一寸ふれておきましょう。

これは東洋社の耕耘機用ミッションTG1を昭和32年に製作したのが始まりで、TG4(TE40とコンビ)HM1Aを経てHM2(TE80Sとコンビのハンド・トラクター用、生産中)HM4(TE80とコンビの前述MB用、生産中)HM5(TE40Aとコンビのハンド・トラクター用、生産中。写真HM5参照)などがあります。HMは日の本ミッションの意味と思われます。

HM5は主減速が前進3段後進1段でこれが高低に切り替わりますから、前進6段後進2段といえます。

HM5 変速機

定置用エンジン (AE48シリーズ)

定置用エンジンAE48シリーズは、自動車用エンジンAE37(コニー600に搭載したもの)を母体としたもので600cc10馬力のものであります。

これは他社の電気溶接機用、フォークリフト用、ロード・ローラー用に生産されましたが、少量にとどまっております。

(写真AE47およびヴィンテージセレクション004自動車用発動機 その2 表9を参照)
ただし、この写真はAE48になる前のAE47であります。

AE47 定置用エンジン



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