レストア物語

No9.エンジン組立て A

〜 とりあえずの最終回 〜

きれいになっていない部品をチェックしていると、大物が残っていました。キャブレターです。キャブクリーナーを吹き付けて、チョイ・チョイで終わるだろうと気軽に分解を始めました。すると、フロート室から大量の砂が出てくる、出てくる。フロートの腐食もひどい。


交換用の部品など無いので、バラバラにし、きれいに洗浄して組立てました。(ちゃんと機能してくれると良いのですが。)

キャブレターをオーバーホールしている間に、エンジンもほとんど組み上がってきました。2サイクルは構造がシンプルなので、楽に組立てができます。しかし、空冷用のダクトを仮組みしようとした時、悲劇!?は起きました。・・・ダクトが組み付かない!プラグの位置が変です。分解前の写真と見比べてみると、シリンダーヘッドを逆に付けていた事が判明。すぐ正しい向きに組み直しました。

これで、エンジン完成。ローププーリーを手で回すと、シュポシュポと圧縮と排気を行う手応えが復活しました。車体完成まで、特製スタンドに載せておきます。
ピカピカになったエンジン。No.5エンジン降ろし(〜降ろしたエンジンを観察〜)の写真と比べてみて下さい。

次回より車体編を続けたかったのですが、これがくせもの。力を受ける部分が全て薄い板の組合わせで作ってあるので、錆びてボロボロ。現在、復元の方法を思案中です。

と言う事で、コニーグッピー・レストア物語は充電の為、今回をもってしばらく休載させていただきます。
ここまで読んで下さいまして、ありがとうございました。続きを期待されていた方、ごめんなさい。

もう、グッピーとの付き合いも5年程になり、時には当時の図面まで引っ張り出してレストアを進めてきましたが、このグッピーという車、当時のエンジニアの独創(独走?)と自由奔放な思い込みがギッシリ詰まった「公道を走った大きなオモチャとしては空前絶後の珍品」だな、と感じました。

これはフジキャビンという三輪車と比べてみると良く分かります。フジキャビンは最小のエンジンで「いかにして2人を運ぶか?」という命題に構想段階から取り組んだ産物です。徹底的に軽くするしか手段が無いというコンセプトから、車輪を節約して、なおかつ接地性、駆動力を得る為の三輪化。小さなタイヤ、右側のドアが無く、フロアのへこみがシートになっているFRP完全一体ボディ。しかし、その結果は?ヘッドランプまで節約した一つ目小僧みたいな気味の悪いスタイリングと荷物が全く積めない実用性の無さから、雨でも濡れない実用運搬スクーターを欲しがっていた人々の支持を得られませんでした。

グッピーはと言うと・・・。
突然変異のように現れたインダストリアルデザインの粋(死語ですね)で、「愛知って何者なの?」と車好きを驚かせ、その凝った本格構造に宝石の輝きを感じさせるものでした。然るにその実態は、三輪のメリットを理解しないまま安易に片輪駆動の四輪に走り、片輪駆動の接地性の悪さを四輪独立サスペンションとゴムスプリングでカバーしようとしたがダメ、やむなくデフを追加。


開発途上のパワーロスの多いトルコンを使い、ヘッドランプはしっかり2個、重量はどんどん増えるという悪循環。そして、まさに普通車のミニチュアが公道を走り出したのです。2台共時代を先取りし過ぎていたみたいです。

話は変わって、トヨタ博物館の展示車にグッピーが加わりました。このグッピーは当時のディーラーが製作したスペシャル仕様で、フルオープン&アメ車みたいなテールフィンに改造されています。軽自動車は1973年まで車検を受ける必要がなかったので、よく改造のベースに使われていた様です。それにしても屋根を切ってしまうとは・・・。車体の強度は大丈夫なんでしょうか。
展示はグッピーの他に、前述のフジキャビン、走行抵抗を減らす為に自転車のタイヤを使ったフライングフェザー、有名なミゼットの4台が並んでいます。すっかり「小さな高級車」になってしまった軽自動車の原点を見て、新世紀のマイクロカーについて考えてみてはいかがでしょうか。

No.9
エンジン組立て
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