レストア物語


No9.エンジン組立て @

〜 あせらず、さわがず、時間をかけて 〜

やっとバラバラになったグッピーのエンジン。中はサビだらけ、外は真っ黒。 どこから手をつけようか。
エンジン主要構成部品
* ボルト横の数字は締付トルクです。



再生中のシリンダーヘッド
レストアやリビルトを専門にやっている所であれば、砂を吹き付けてあっという間に汚れを落とす便利な道具があるのですが、こちらはアマチュア・レストアラー。全て手作業で進めます。

手始めはクランクケースから。外の堆積物を剥がしてゆくと、中から新品そのままのアルミ地が出てきました。まだら模様になったらブレーキクリーナーを吹き付けて、ブラシで汚れを落とします。ブラシの届かない所には爪楊枝等を使いながら、細かな作業をひたすら続けていきます。こうして1つずつ部品を再生してゆきます。

次はシリンダー。内面はキズだらけでした。電気ドリルとウェスを使い内面を磨いてみましたが、深いキズは取れません。高い圧縮比のエンジンではないので、これで良しとします。

磨き作業に熱中していたある日、作業机の上のラップをかけたコップに気がつきました。ラップを取ってみると、ピストンリングを外す為に劇薬に浸けていたピストンが入ってました。

2ヵ月程忘れていたので、「まさかピストンが溶けているのでは?」という考えが頭をよぎります。恐る恐るピストンを引き上げてみると・・・、ピストンリングの端が少し浮いています。焼き付いたカーボンがわずかですが溶けている様です。しかし、この劇薬を使っても2ヵ月では少し浮いてきただけ。3年ぐらいは浸けておかないと外れそうにありません。さすがにそこまで気長には待てないので、ドライバーの柄で軽く浮いた部分を叩いてみる事に・・・。30分程叩いていると浮き上がりがわずかに大きくなってきました。これしか方法は無いと、およそ2ヶ月程叩き続けて、2本共外す事ができました。しかし、叩いている様子は、他人が見れば鐘を叩いている様に見え、まるでコニー教の布教活動みたい。


磨き終わったベアリング
布教活動をやっている間に汚かったクランクケースもすっかりきれいになっています。サビだらけのベアリングは、クラブ所有の工具では外せないし、交換用の部品もありません。そこで、CRCやグリース等で再生を試みます。サビ落しと洗浄を行い、ガタや引っ掛かりの無い事を確認して、このまま組んでしまいます。

完璧に磨いてあるので、組立ては簡単です。あっという間に組み上がってしまいます。

ピストンリングは2本で組み付けます。(この方が摺動抵抗が少なくて、良く回るかも?) ピストンリングが広がったままだとシリンダー内に入れる事ができません。専用工具で押さえてシリンダーの中に押し込むのですが、たった1つのピストン組み付けの為だけで買うのはもったいない。自作する事にします。

初め、ジュースの空缶を切り抜いて試したのですが、長さがちょっと足りません。他に良いものは?と、こんな時の為に集めてある材料(人はこれを「ゴミ」と呼ぶ)の中より、プレス加工の時に出てくる端材を適当な長さに切って細長い板を作ります。この板をピストンに巻いて、ピストンリングを押さえつけておいて、シリンダー内へピストンを挿入します。多少作業性は悪いですが、大成功!十分使えます。


おや? キャブレターのオーバーホールがまだでした。この話は次回で・・・。

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