レストア物語ヘッダー
「出生の秘話」


倉庫から持ち出した古い資料にあったAF3コニーに関するお話、もう少し紹介しておくね。


伊勢湾台風の影響

昭和34年(1959)9月26日夕刻、東海地方を強襲した伊勢湾台風(台風15号)は、満潮時と重なって伊勢湾沿岸地帯を中心に未曾有の被害をもたらした。

愛知機械工業も、熱田工場のプレス・板金・塗装・修理・鋳物の建屋等工場全体の約3分の1が冠水し18日間に渡って操業不能に陥ることとなり、損害額は窓ガラス・スレートの破損などを含め5,800万円にものぼった。

この被害により、翌月に開催される全日本自動車ショーに向けての準備作業が中断、出品を予定していた愛知機械工業初の軽四輪車「コニー360トラック」の新車を用意出来なくなってしまったが、既に造られていた試作車を突貫で再整備し化粧直しすることにより、自動車ショーへ出展することが可能となった。

東京晴海埠頭で開かれた第6回全日本自動車ショーの会場には、「くろがねベビー」、「スズライトTL」、「昌和ミニカ」、「パドル」など他社の軽四輪商用車に混じって展示された本格的なスタイリングを纏った「コニー360トラック」は、入場者の注目の的となった。

コニー360 1万台突破記念セール

昭和34年(1959)12月にコニー360トラックAF3型を発売以来、売上げは順調に伸びていたがさらに35年6月からライトバンAF3V型を追加発売し翌月以降の月産2,000台計画を達成するため 7月から9月までの3ヵ月間、コニー360 1万台突破(35年8月24日)記念セールを全国的に展開した。

同期間中は、新聞などマスコミ媒体を通じた宣伝広告をはじめポスター・チラシを配布、コニー購入者には抽選で特賞100万円(1人)、1等コニー360ライトバン(10人)、2等8ミリカメラ(20人)、その他記念品を贈呈するというキャンペーンを実施した。

また販売代理店に対しては、同セールの経費援助として6月分割当て台数を引き取ったところに、7〜9月の販売台数に応じて1店当たり5万円〜50万円を支給した。この記念セールの成果は実績登録台数が5,617台に達し、成功のうちに終了した。


「10000台突破記念」宣伝広告

「10000台突破記念」市中パレード

コニー賞

昭和35年(1960)10月から12月末までの3ヵ月問、コニー月間登録3,000台突破を目標に特別奨励金の支給と合わせて、セールスマンの販売意欲高揚を図るため、優秀セールスマンに「コニー賞」を贈呈することにした。

奨励金は、3ヵ月間の登録責任台数100%を超えた場合1台当たり2,000円、120%を超えた場合1台当たり3,000円、150%を超えた場合1台当たり4,000円、85%以上達成の場合は1台当たり1,000円と4ランクに分けて支給した。

成果は、特別奨励金支給が34店で1,400万円、コニー賞受賞セールスマンは41店で68人に達した。なお、コニー360登録状況は、10月1,651台、11月2,518台、12月3,221台と、12月に目標を突破した。


販売増で活気溢れる製造ライン

モータープールに並ぶ半完成車

途中で変更されたエンジン

初期のAF3コニーには、AE57型エンジンが搭載されていた。
これは愛知機械初の軽自動車であった「AA27」三輪車用に開発されたもので、当時の軽自動車規格(排気量360cc以下)に合せ、ヂャイアントに搭載していた524cc水平対向2気筒4サイクルエンジンをベースに冷却方法を水冷から空冷に改め、ストロークはそのままにボアを縮め ボア58mm×ストローク68mmとした排気量359ccのロングストロークエンジンであった。

平軸受、一体型クランクシャフト、オイルパン式、鋳鉄製クランクケース、動弁機構にベークライト・カムギヤを採用していた。
後期型のAF3コニーに採用されたAE58エンジンは、AE57の軽量化及び性能向上を狙って開発され、ボア64mm×ストローク55mmとした排気量354ccのオーバー・スクエアエンジン。主軸受けはボールベアリング、コンロッド端部はニードルベアリング入りの組立て式のクランクシャフトで、潤滑もドライサンプ式(*)となった。
最初は動弁機構にベークライトのカムギヤを使用していたが、後にゼロラッシュ・カムギヤ(*)となった。
このAE58エンジンは、その後AF6、AF7、AF11各コニーに搭載され、当時の愛知機械では生産台数が最多のエンジンとなった。


AE57は15.6馬力

AE58では18.6馬力にUP!
* ドライサンプ式
一般に自動車用エンジンは各部を潤滑したオイルが最後にエンジンクランクケース下のオイル・パンに溜り、再びオイルポンプで各部に圧送されるオイルパン形式であるが、クランクケースに溜まったオイルを排油ポンプで別のオイルタンクへ汲み出すのがドライサンプ式。
これだとオイルは熱源のエンジンから離れたタンク内にあるから冷却が良くなるし、エンジン下部にはオイルパンが不要となりエンジン高が低く、搭載位置も下がるために重心が下がって運動性能が向上する。
* ゼロラッシュ・カムギヤ
クランク軸でカム軸を回す時に、バルブが下がる場合には逆にカム軸がクランク軸を回す格好となり、歯車の裏面を打つようになる。
これによってギヤノイズが発生するため、これを防止する目的でギヤを二分割してスプリングで互いに反対方向に張らせてガタを無くす=バックラッシュをゼロにする構造をカムギヤにも採用した。
初期にはベークライト(合成樹脂)でギヤを作り、ギヤノイズが発生しないようにしていた。

組合わせられた2つのギア、判るかな?  


ということで、AF3コニーという車について少しは解ってもらえたかな?
まだまだいろいろあるけど限がないので、最後に倉庫から出てきた
AF3開発当時に撮影された「超レア」な写真を掲載しとくね。



1/5の石膏モデル

全体を上から

1/1の木型を製作中

我々のと比べると細部が違うなあ




ではでは、AF3復元の話へ戻ろうか。

AF3編 ・・・ 第4章へ
AF3編 ・・・ 第6章へ