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「流用伝説」



壁にぶち当たってすっかり熱が冷めてしまい1年程の月日が過ぎたある日のこと、
突然イベント参加のお誘いがあったのだ。
詳しくは→<AF7コニー編>第一部/番外編・・・「イベント参加物語」を読んでね。
イベントと言われて再び岡崎での悔しさを思い出し、今度は不動車を持ち込まないぞと
搬送トラックへコニーちゃんを積込む前に念入りな整備。


エンジンは調整したから走行可能となった、だけどブレーキには手を付けられなかったので、
止まるには相変わらずハンドブレーキだけが頼り。
そうだよなあ、ブレーキの完全修復を進めなくっちゃ。

イベントの翌週、早速コニーのオーナーさんへ電話を掛けてみた。
流用した部品は何か解かりましたか?
「ホイールシリンダーは、トヨタのフォークリフト用ですよ。」
へー、フォークリフト用って意外だなあ。やっぱり加工は必要なんですよねえ。
「ピストンをちょっと削って長さ合わせる必要があるみたいなんですけど、
 あとはそのまま使えるらしいですよ。他のオーナーも同じことをしているみたいですし」
価格は1個5000円ぐらい、前後共に同部品なので4個必要とのこと。
部品番号も教えてくれたから、これならすぐに入手できる。
「でもマスターシリンダーは、何か解からなかったです。」
あらら、それは残念。クルマ屋さんに聞いてくれたそうだが、覚えていなかったそうな。

因みにコニーちゃんのブレーキは4輪ドラム式、マスターシリンダーからホイールシリンダーに
油圧を送って2つのブレーキシューを広げてドラムへ当て、
摩擦抵抗によりホイールの回転を止める構造。


最近の車ではディスクブレーキが主流だけど、昔は構造が簡単なドラム式がスタンダートだった。
連続ブレーキを行うとドラム部がすぐ熱を持ってしまいブレーキが利かなくなってしまうドラム式の欠点は、
高性能化された現代の車には不向きで、フロントにドラム式を採用した車は既に淘汰されちゃった。
でも初期制動はドラム式の方が勝っているので、
ディスクブレーキの感覚でうっかりブレーキペダルを踏んじゃうと
ガツン!という衝撃があるぐらいの急ブレーキが掛かってしまう。
これを俗に「かっくんブレーキ」と呼んでいたっけ。

さて、解決しそうなホイールシリンダーに対してマスターシリンダーの方はお先真っ暗、
何が流用できるか解らないから新品を決め打ちで購入することもできない。
あとは解体屋を巡って使えそうな部品を買ってきてトライ&エラーを繰り返すしかない。
全くもって効率的じゃあないねえ。
ところで最近の車は、大きなブレーキ容量を要求されていることからマスターシリンダーもデカいんだよね、
ちょっと大き過ぎてコニーには取り付けられない。
しかし隣にあるクラッチのマスターシリンダーなら丁度良いかも。



ちょっと待てよ、取り付け穴が合わないかも。
コニーの様に取り付け穴が縦一列に並んでるマスターシリンダーなんか
なかなか見つけられないかもしれないよ、だって上穴の取り付け作業はエアーツールが入らないじゃない。
さあて、簡単には見つけられそうにないみたい、困ったなあ。

リザーブタンクが邪魔でエアツールが使えない。
工場でもスパナを使っていたのかな?

そうだ、また別の手段を思い付いたぞ。
以前、会社の倉庫で資料探しをしていた時に、ダンボールに詰め込まれた当時の図面が眠っているのを
発見したんだけど、その中からマスターシリンダーの図面を探し出して、悪い部品だけ造り直すという方法。
ピストン部のゴムなら、オーバーサイズで専門業者に造ってもらえば良いし、
金属の削り出しなら加工の専門業者に頼むのさ。
専門業者探しは社内の試作部門に居るベテランの人に相談して、取引のある試作メーカーから
ゴムの加硫や削り出しが得意な会社を紹介してもらっちゃおうかなと。
もちろん業務じゃないし、たった数個造るだけなので、かなりの費用になってしまうのか不安ではあるが
なんとか部費で払えることを祈って直接交渉するしかないだろう。
とにかく図面を探せるよう、倉庫への立入り許可願いだけはしておくか。

許可を待つ間に、ホイールシリンダーの入手をすることにした。
フォークリフトの部品は普通のトヨタ部品共販では購入できそうにないから、トヨタL&F中部に聞いてみるか。
「その部品ならありますよ。」
対応してくれた部品課の人は、すぐに端末を叩いて調べてくれた。
「えーっと、1個5,690円なので消費税込みで23,898円です。」
これもまた古い型の部品らしい、じゃあお願いします。
週末に取りに行くと約束し、電話を切ったのであった。
今年度のクラブ活動予算、これで殆ど使い切ってしまうわけね。

後日、トヨタL&F中部へ出向いて購入したフォークリフト用のホイールシリンダーは、これ。



ああこれでホイール側はなんとかなりそう・・・。なんて思ったのは早合点だった。
コニーのオーナーさん達に伝わる流用伝説は、やっぱり”伝説”であり、
その後とんでもない状況に陥るのを、その頃の我々は知る由もなかった。



次回に続く

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